印字機を真空包装機に組み込む
はじめに
真空包装機は、現代の製造業において特に食品、医薬品、工業分野で重要な役割を果たしています。自動真空シーラーや真空ラッパーなどのシステムは、包装内の空気を除去し、製品を密封することで、保存期間の延長、衛生の確保、輸送および保管の最適化を実現します。製造環境が進化する中で、より厳格な規制要件、消費者による透明性の要求、サプライチェーンの円滑な連携の必要性が高まっており、製品に正確かつ追跡可能な情報をマーキングする能力は、生産工程において不可欠な要素となっています。
真空包装機への印字機・ラベリング機器を組み込むことは、バッチ番号、賞味期限、バーコード、ロット番号などの重要な製品情報を、包装工程中にリアルタイムで製品に付加することを可能にします。この情報は、トレーサビリティ、法規制の遵守、在庫管理、そして顧客の信頼を支える役割を果たします。
機械装置メーカーやエンドユーザーにとって、印字機・ラベリング機器の組み込みは、新規の機器設計時に行うにしても、既存設備への後付けとして行うにしても、性能、柔軟性、長期的な信頼性を高めます。機械の設計段階で早期に印字システムを統合しておくことで最もスムーズな結果が得られますが、既存の包装ラインに後付けする場合でも、慎重に行えば大きなメリットが得られます。
もし機械設計の初期段階で印字・ラベリングシステムを組み込む決断をするならば、それは戦略的な行動となります。システムの統合を遅らせたり、後回しにしたりすると、後付けに高額な費用がかかる、性能が最適化できない、ラベルの誤表示や法令を遵守できなくなるリスクが高まる可能性があります。

シームレスなシステム統合のメリット
真空包装機(真空シーラーや真空ラッパーなど)に印字機およびラベリング装置を直接組み込むことは、運用面およびビジネス面で非常に大きなメリットをもたらします。中でも特に重要なのは、印字工程を自動化することで生産を合理化できる点です。印字の自動化により、後工程でのラベル貼付作業への依存が減り、エラーのリスクも最小限に抑えられます。
印字機をインラインで組み込むことにより、包装ラインはより高速に、人の介入が少ない環境で稼働できるようになり、全体的なスループットと効率が向上します。
トレーサビリティの観点から見ると、包装機に組み込まれた印字システムはすべてのパッケージに正確なタイムスタンプ付きの情報をマーキングすることを可能とするため、サプライチェーン内で時刻情報の追跡・検査を行うための機能を持たせることができます。
これは、食品や医療機器などの業界において特に重要であり、正確なラベリングによって規制当局の承認を得るか、もしくは高額なコストのかかるリコールを招くかの分かれ目となる可能性があります。
真空包装の印字・ラベリング技術
真空包装ラインに印字機・ラベリングシステムを統合する際には、印字品質、信頼性、包装環境との適合性を確保するために、適切な技術の選定が極めて重要です。製造業者は、対象物の素材、生産速度、環境条件、法令遵守の要件を考慮しながら、一次包装および二次包装の両方に対して最適な技術を選定する必要があります。
連続式インクジェット(CIJ)技術

CIJ(連続式インクジェット)は、その汎用性と高速性から、真空包装の現場で広く使用されている主要な技術です。
CIJシステムは、バッチ番号、賞味期限、バーコードなどの可変データを、連続した細かいインク液滴を移動中の包装材に非接触で吹き付けることで印字します。この非接触の印字方式は、軟包装用フィルムや真空包装でよく見られる不規則な形状および曲面のあるパッケージなど、さまざまな「面」に対して効果的です。
CIJは高速印字の性能に優れ、既存の包装ラインへの組み込みも容易で、印字にとって過酷な環境・多様な環境の下で信頼性の高い印字を行うことが可能です。ただし、インクや溶剤の定期的な補充が必要であり、結露や特に滑りやすいフィルムの特性が影響して印字品質が低下する可能性があります。
熱転写式サーマルプリンタ(TTO)

TTO(熱転写式サーマルプリンタ)は、軟包装用フィルムに高解像度で耐久性のある印字を付加します。TTOは加熱された印字ヘッドを使用して、リボンから包装材にインクを転写し、バーコード、グラフィック、そして細かい可変データの表示に最適な、鮮明でこすれに強い印字を実現します。
この技術は、印字の鮮明さと耐久性が求められる真空包装ラインに特に適しています。ただし、フィルムの張力を正確に制御できる環境での使用が最適であり、フィルムにたるみやシワがあると印字品質に影響を及ぼす可能性があります。また、印字エリア周辺に結露が多く発生する環境では、性能が低下することがあります。
レーザーマーキングシステム
レーザーマーキングは、CO₂やUVなどの集束レーザービームを使用して包装材の表面を変化させることで、恒久的で高コントラストなコードをマーキングします。この方法はインクなどの消耗品を必要としないため、メンテナンスや運用コストを大幅に削減できます。
レーザーマーカーは、改ざんを防止できる永続的なマーキングを得意としており、滅菌処理、湿気、油分、溶剤などに耐えるため、医薬品や高級な食品など、耐久性が重視される用途で広く利用されています。
ただし、レーザーを使用する際には、効果的なマーキングを実現するために素材との相性を慎重に評価する必要があります。また、作業者の安全を確保するために、適切な遮蔽の対策が求められます。さらに、インクを使用する方式と比べて、初期費用が高くなる場合があります。
真空包装にレーザーマーキングを行う場合、実装前にフィルムまたはホイルのバリア機能の完全性をテストすることが不可欠です。不適切なレーザー設定や相性の悪い材料との組み合わせは、バリア性を損ない、製品の保存期間や安全性に影響を与える可能性があります。UV レーザーを使用すると、エネルギー吸収が低くなり、マーキング機能がより正確であるため、上記のようなリスクを最小限に抑えることができる可能性があります。レーザーマーキングが適切な手段となるかどうかは、フィルムまたはホイルの種類とその組成によってことなるため、材料との相性の評価は印字機の組み込みのプロセスにおける重要なステップとなります。
各種の印字・ラベリング技術の特性と、それらが真空包装機とどのように組み合わせられるかを理解することで、機械装置メーカーやその他のメーカーは、効率、トレーサビリティ対応、法令遵守を最適化しつつ、将来的なデジタル面の統合を叶えたり、運用上の変更にも柔軟に対応できたりする包装ラインを構築することが可能になります。
システム統合に関する考慮事項
スタンドアロン型の真空シーラーであれ、大規模な自動真空包装設備の一部であれ、真空包装ラインに印字システムを効果的に統合するには、連携が重要です。密閉型の包装機やコンパクトな包装システムにおいては物理的なスペースが限られてるため、印字ヘッドそのものだけでなく、ケーブルの配線、コントローラーの設置場所、作業スペースの確保、作業者にとっての操作性なども考慮することが重要です。
取り付け用ブラケットは、異なる包装形態に対応できるよう、微調整や迅速な位置変更が可能である必要があります。
食品や医薬品分野をはじめ、多くの包装設備に共通する「過酷な環境条件」は、さらなる課題をもたらします。プリンタを選定する際には、粉塵、湿気、強力な洗浄剤、温度変動などを考慮する必要があります。環境に適したIP等級を有する機器、耐腐食性のある筐体、環境からシステムを保護するエンクロージャーなどは、稼働率の維持や衛生基準の遵守に不可欠です。
さらに、シュリンクフィルム、真空パウチ、ラミネート基材などの包装材料は、インクの定着性や熱転写に影響を与える異なる表面特性を持つため、それぞれ調整やテストが求められます。
現代の製造ラインは、相互接続されたシステムやスマート制御に大きく依存しています。印字・ラベリング技術を包装機の制御システムに統合するには、Ethernet/IP、OPC-UA、Modbus、シリアルインターフェースなど、既存の通信プロトコルとの互換性が必要です。
印字機とヒューマンマシンインターフェース(HMI)間でデータをシームレスにやり取りできることで、設定の一括変更、印字の検証、ステータスの監視が可能となり、作業者の負担を軽減し、生産ミスのリスクを最小限に抑えることができます。
また、印字システムは定期的なメンテナンスや消耗品の交換が容易に行えるように設計されている必要があり、特に高スループットかつ短時間のシフトで稼働する現場では、装置の分解を伴う長時間の作業や生産の中断を避けることが重要です。

実装を成功させるためのベストプラクティス
印字・ラベリングの統合価値を最大化するためには、機械装置メーカーやエンドユーザーとなる製造業者が、設計初期段階から積極的かつ協調的なアプローチを取ることが重要です。コンセプト設計や試作段階で印字機器のサプライヤーと連携することで、機械的・電気的・ソフトウェア面の各要素がはじめから整合され、後で高額な費用の掛かる手直しや後付けを行う必要性を回避することができます。
パイロットテストや生産ラインのシミュレーションは、実際の現場環境における印字機能を検証するための有効な手段です。
実際の包材を使用して幾らかのロットで試験的に運転することで、プリンタの設定を微調整し、印字の視認性を確認し、本格的な導入の前に環境要因による課題を解決することが可能になります。
技術的な性能に加えて、「人」の要素も導入成功の鍵となります。作業者は、ユーザーインターフェースの操作、印字パラメータの調整、基本的なトラブルシューティング手順など、印字機器を正しく運用・保守できるように訓練されている必要があります。
迅速なサービス対応、スペアパーツの供給体制、リモート診断機能を提供するサプライヤーを選定することで、ダウンタイムを大幅に削減し、長期的な運用の継続性を確保することが可能になります。
システムの組み込みにおいて、経験豊富なパートナーの存在は非常に大きな価値をもたらします。真空包装ライン特有の課題—たとえば、パウチやトレーの正確な位置決め、結露の問題、フィルムの特性など—に精通したサプライヤーであれば、現場の環境に適した、信頼性の高いソリューションを提案・カスタマイズすることが可能です。
実際の例: MULTIVAC + Videojet
システムの統合に成功した優れた事例として挙げられるのが、真空包装機のグローバルリーダーであるMULTIVAC(ムルチバック)社とビデオジェットの協業です。両社は、高速かつ衛生的な包装と、追跡可能かつ法令を遵守したラベリングを必要とする食品メーカー向けに、ターンキーソリューションを提供しました。
課題
ある大手食品メーカーは、大量生産に対応しつつ、すべてのパッケージに賞味期限やロットコードなどの正確で判読可能な可変データを印字するニーズも叶える真空包装のソリューションを求めていました。導入されるソリューションは、堅牢でメンテナンスが容易であり、既存の生産環境にシームレスに組み込めることが求められていました。
ソリューション
ビデオジェットはMULTIVAC社と緊密に連携し、連続式インクジェット(CIJ)および熱転写式サーマルプリント(TTO)の技術を、MULTIVAC社の成形真空包装システムに直接組み込みました。このシステムの統合により可変データをリアルタイムで包装フィルムに印字することが可能となり、生産ペースを落とすことも、印字品質を損なうこともありませんでした。
「ビデオジェットとの連携は、すべてが非常にスムーズに進みます」と、MULTIVACのエリアセールスマネージャーは語り、協業のしやすさとシステムの互換性の高さを強調しました。
結果
- 印字機能が統合されたシステムは、生産のボトルネックを生むことなく高速な生産ペースを維持し、生産能力を向上させました。
- すべてのパッケージには、追跡可能で規制に準拠したデータが印字されていました。
- 内蔵された印字機能により、二次的なラベリング工程が不要となり、段取り替えにかかる時間が最小限に抑えられ、ダウンタイムの削減につながりました。
- 印字機は、食品製造環境における衛生要件を満たすように設計されていました。
本事例が機械装置メーカーとエンドユーザー(製造業者)にとって重要である理由
この事例は、包装機メーカーと印字技術のプロバイダーとの早期連携がもたらす効果を示しています。機械設計の初期段階からシステムの統合を前提に設計することで、包装機メーカーはよりスマートで競争力のある装置を提供することができます。製造業者(エンドユーザー)は、運用面での卓越性とブランドの信頼性を支えるターンキーソリューションの恩恵を受けることができます。
真空包装機への印字機組み込み
ビデオジェットとMULTIVACがどのように協力し、食品メーカーの高速化、法令遵守、トレーサビリティ向上を支援したかをご覧ください。印字機能のシームレスな組み込みを実現した事例です。

結論
製造の基準がますます高度化し、デジタルによるトレーサビリティの必要性が普遍的なものとなる中で、印字・ラベリングシステムを真空包装機器に統合することは、それがコンパクトな真空ラッパーであれ、処理能力の高い真空シーラーのラインであれ、品質、法令遵守、生産性において定量的なメリットをもたらします。
生産ラインのスピードの向上から、精度の改善、Industry 4.0への対応まで、システム統合ソリューションは、規制の厳しい大量生産市場で競争力を維持したいと考える製造業者にとって重要な存在です。
機械装置メーカーや生産技術担当者にとって成功の鍵となるのは、装置開発の初期段階から印字機器の専門家と連携することです。新しいラインの設計であれ、既存インフラのアップグレードであれ、早期の協業により、柔軟性、衛生、効率を損なうことなく、印字ソリューションを包装工程にシームレスに組み込むことが可能になります。
その結果、その時点の要求事項に応えるだけでなく、将来の課題にも対応できる、よりスマートで強靭な生産ラインが実現します。

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Marc Discher is a marketing leader at Videojet Technologies with extensive experience supporting OEMs in integrating coding and marking solutions into production lines. He specializes in aligning technology with complex manufacturing needs, helping global partners improve efficiency and compliance.
