医療機器への印字・マーキングにおける革新的な技術: 印字方法にお悩みの皆様に向けたガイダンス

医療機器のラベリングは、米国、EU地域の国々、そしてその他の多くの国で厳しく規制されており、多くの場合はそれぞれの機器のタイプに対して特定のラベリング要件が設けられています。規制に準拠するために、医療機器のメーカーは次の項目を明らかにしておく必要があります。

  • 製造する医療機器のそれぞれについて、関連する規制・法律(コード・その他データの表示の必要性を定めるもの)はどのようなものがあるか
  • 情報を医療機器本体に直接刻印する必要があるか、もしくはラベルを貼り付ける必要があるか

医療機器に対してレーザーマーキングを行うことは、メーカーが業界の規制を遵守するために選択できる優れた方法の一つです。ただし、メーカーによってはインクジェットで医療機器本体もしくは医療機器に貼られたラベル上や包装にインクジェットで印字する方法が選択される場合もあります。

現在、米国、EU、日本、オーストラリア、ブラジル、中国、サウジアラビア、シンガポール、台湾では、医療機器上の表示に関するUDI(Unique Device Identification、機器固有識別) の要件を既に導入しているか、もしくは段階的に導入を進めています。UDIの義務化は、通常、医療機器のリスク分類(クラス)に基づいて段階的に行われます。最もリスクの高いカテゴリに分類される医療機器については、これらの要件を遵守するための猶予期間がメーカーに対して与えられることが通例となっています。

印字方法の選択は、医療機器メーカーにとって業界の規制をクリアする上で重要なポイントとなっています。印字機として用いられるレーザーマーカーやプリンタに求められることとしては、医療機器の生産ラインに組み込めること、安全性やコンプライアンスを損なわない方法で運用できること、日々複雑化していくデータを処理できること、機械可読性のあるコードおよび/または人間が読めるコードを印字できること、簡単には消えない耐久性の高いコードを印字できることが挙げられます。

UDIコードとは何ですか?

UDI(Unique Device Identification) コードは、医療機器の識別に使用できる2 種の機器固有識別子(一意のもの)によって構成されています。

• 機器識別子 (UDI-Device Identifier、製品・製造元に関する固定された情報)
• 製造識別子 (UDI-Production Identifier、バッチ番号や有効期限などの動的な生産データ)

UDIコードは 、プレーンテキストおよび機械判読が可能である形式の両方で製品に表示する必要があります。機械判読が可能である形式として最も一般的なコードは DataMatrix、GS1-128、および Code 128 です。

医療機器へのマーキング・印字用に機器を選択する際、考慮すべきポイントは何ですか?

マーキング・印字用の機器を選択するときは、次の点を考慮してください。

• 生産ラインの速度に追従できる機器であるか
• 理想とする印字の品質を維持し続ける能力があるか
• 現場で使用する予定の他の機器にシステムを統合することができるか
• 運用が簡単であり、メンテナンスの必要性が最小限で済むか

医療機器の表面に直接印字・マーキングを行うにはどのような技術の利用が推奨されますか?

さまざまな素材で作られた多くの種類の医療機器が存在し、それらすべてに適する万能の印字技術・マーキング技術というものはありません。医療機器の表面へ直接印字・マーキングを施すためには、対象物の素材やその他の要件の違いに応じて連続インクジェット(CIJ)プリンタとレーザーマーキングシステムがよく選択されます。

ビデオジェットのプリンタまたはレーザーマーカーはクリーンルーム内に設置できますか?

はい、ビデオジェットのプリンタ・レーザーマーカーはクリーンルーム環境内に設置できます。ただし、クリーンルームの完全性を維持するためには一定の考慮事項を伴います(以下参照):

クリーンルーム内で連続式インクジェットプリンタを使用する場合の考慮事項

  • インクの流れの制御:インクジェットは、小さなインク液滴の連なりをコントロールしてインクを放出します。意図せぬ空間に飛散したインクは空中粒子となってクリーンルームを汚染してしまう可能性があるため、インクの液滴の流れを適切に調整することが重要となります。
  • クリーンルーム内の環境がもたらす影響:過度の気流や静電気などの異常な状態によってインク液滴が予期せぬ方向に飛んでしまうと、空気を汚染する空中粒子となる可能性があります。汚染を避けるために、環境を管理する必要があります。
  • エアーの供給:ビデオジェットのプリンタの一部は高圧エアーを必要としますが、プリンタの正しい動作を保証するためにはフィルタリングされたエアーを使う必要があります。多くのクリーンルームには、すでに適切にろ過されたエアーの供給があります。ろ過されたエアーがクリーンルーム内に供給されておらず、新たに供給の準備を行う必要がある場合は、クリーンルーム外にフィルターシステムを設置することでフィルターシステムのメンテナンス時にクリーンルーム内での汚染の発生を避けることができます。

クリーンルーム内でのレーザーマーカーの使用

ヒュームの集塵:レーザーマーキングを行う場所では、マーキングの工程で発生する微粒子や煙に対処するために、ヒュームの集塵設備を使用することが必須です。クリーンルームにに既存のエアーろ過システムが装備されている場合でも、別途集塵機が必要です。さらに、クリーンルームの環境を維持するために適切な排気口を設置し、集塵機が吸い込んだ空気を新鮮なろ過されたエアーと同等のものに変換する必要があります。

クリーンルーム内でのUDIマーキングやその他の医療機器への印字を目的として、レーザーマーカーと連続式インクジェットプリンタのどちらの手段を選択するべきかを見極めるためには、マーキング対象となる製品のライフサイクルを考慮することが重要です。 その医療機器を将来的に滅菌する必要がある場合は、レーザーマーキングによる消えない印字が理想的なソリューションとなります。 クリーンルームのプロトコルと安全ガイドラインに常に従い、環境の無菌性と完全性を維持してください。

連続式インクジェットプリンタ (CIJ) の機能はどのようなものですか?

CIJ プリンタは、金属、プラスチック、ガラスなどのさまざまな素材の表面にテキスト、バーコード、二次元コードをマーキングできます。高度な機能を持つ印字ヘッドと幅広い種類のインクによって、さまざまな種類のシリンジ、シリンジキャップ、ブリスター包装、カートンへの印刷に対応できるようになっています。印字の持続性と解像度の要件を満たしつつ印字のマイグレーション(インクなどが他の部分に移る現象)を避けるためには、印字対象物の素材に適したインクを検討する必要があります。

レーザーマーカーのメリットと主な用途は何ですか?

レーザーマーキングでは集塵機用のフィルター以外に消耗品を必要とせず、医療機器に対して高品質で恒久的なマーキングを施すことができます。CO2レーザー、ファイバーレーザー、UVレーザーの技術のうちどれを使用するかにもよりますが、レーザーではプラスチック、金属、ガラスに優れたマーキングを施すことができます。例えば、次のような印字が必要である場合にレーザーマーカーが適しています。

• プロテーゼや手術器具などの医療機器に恒久的な消えない印字を施したい場合
• 繰り返しの洗浄、滅菌、使用に耐える印字が必要である場合

医療機器のマーキングにおいて、TIJ プリンタ およびTTOプリンタはCIJプリンタおよびレーザーと比較してどのような違いがありますか?

レーザーマーカーや連続式インクジェットプリンタはさまざまな医療機器本体に直接マーキングするために使用できますが、TIJ (サーマルインクジェット) およびTTO (熱転写プリント、サーマルプリンタ) のソリューションは、多くの場合医療機器の「包装」のほうに高解像度で印刷するために用いられます。TIJプリンタは、以下の点で優れています。

• Tyvek®、ブリスター包装、カートンへの印刷
• 包装ライン周りのスペースが狭い場合に特に役立ちます

TTOは、包装機械に組み込まれた状態で軟包装 (フィルム包装)、Tyvek®、ラベルへの印刷のために利用されます。

医療機器メーカーはどのような印字の課題に直面していますか?

医療機器メーカーは製品上のコードを画像検査カメラで読み取れる状態にする必要があり、シリンジなどの小さな製品・印字が困難な医療機器も対象となります。このため医療機器メーカーは、使用するプリンタやレーザーマーカーで読み取りに十分なコントラストのコードを印字できるかどうかを確認しておく必要があります。他にも印字機に求められることとして、印字対象物の向きに合わせた調整が可能であることや、実際の生産速度で運用した場合にも印字の品質を維持できることが挙げられます。

シリンジにマーキングする際に役立つCIJの機能はありますか?

最先端のCIJプリンタには次のような機能を持つものがあります。

• 印字ヘッドに自動セットアップ機能と自動キャリブレーション機能を搭載。温度やインクの粘度の変化に応じた調整を行うことでインクの液滴が正確な位置に放出される状態を維持
• 途中でクリーニングの工程を挟まずに長時間稼働させる場合にも、陽圧エアーにより印字ヘッドが清潔に維持される機能
• 印字ヘッド内部を清潔に保つためのオートリンス機能
• インク類のカートリッジは内容物がこぼれない設計になっており、プリンタにカートリッジを挿入するだけで使用可能
• 取り扱いミスを防ぐため、インクカートリッジにマイクロチップを内蔵

また、高解像度のCIJプリンタを選べば、非常に小さいサイズの英数字テキストやDataMatrixコード、その他の二次元コードであっても明確かつ正確に印字できます。さらに、オートクレーブに耐える印字やUV光を照射すると蛍光で光る印字など、特有の機能を備えたさまざまなインクがCIJ用に用意されているため、シリンジへの印字要件のそれぞれに対応することが可能です。

プリンタまたはレーザーマーカーの選定

医療機器へ印字するための技術を選定する際は、印字の要件、印字の内容、生産ラインの条件、および印字対象となる製品のライフサイクルを考慮に入れる必要があります。CIJ、レーザー、TIJ、TTO、およびその他の印字技術に関する専門知識を蓄えてきたビデオジェットは、医療機器メーカー独自の要件を見極めたうえで、コンプライアンス上の課題や効率の課題をクリアしながら現場で最適に機能する理想的なプリンタ・レーザーマーカーの選定をサポートします。

さらに、ビデオジェットはURS(ユーザー要件仕様書)へのコメントや標準化されたIQ・OQ関連のドキュメントを提供することで、GAMPへの準拠をサポートします。URSを満たすために標準のビデオジェットプリンタに対して機能の追加やアップグレードが必要である場合、ビデオジェットがその機能を開発し、それに伴うIQ・OQのカスタマイズをサポートいたします。

医療機器への印字・マーキング方法についてお悩みですか?ビデオジェットはお客様が十分な情報を基に意思決定を行えるように、印字に関する専門的なアドバイスやサポートをご提供いたします。

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